うちは田舎だから、ハロウィンするおじいちゃんやおばあちゃんはいない。世間は盛り上がってるけど、こっちにその気配はお菓子くらいしかない。それなのに、なぜか毎年「今日一番本気の仮装、患者さんじゃない?」って思う瞬間がある。
たとえば、板前風の格好で来院する患者さんがいる。もちろん本人は仮装のつもりなんて一切なくて、おそらく仕事の休み時間で受診に来てる。仮装じゃなくて本物の板前というか、料理人らしい。でもこっちからすると、初対面で見た瞬間「え、板前さん?」ってなっちゃう。本人はいたって真顔で診察受けてるのに、周りだけが一瞬ざわつく。
「パーティーですか?」って聞きたくなるくらい気合の入った服装で来る患者さんもいる。派手な柄、目を引く色使い、アクセサリーもばっちり。体調不良で受診してるはずなのに、その服装だけ見たら結婚式帰りにしか見えないんだよね。ハロウィンだからでも何でもなく、普段からそのテンションで来てるのがまたすごい。
朝から具合が悪くて動けない、って訴えてる患者さんが、化粧ばっちりで来院することもある。眉毛もアイラインも完璧に仕上がってるのに、口では「もう本当につらくて」って言ってる。その化粧は何時間かかったんですか?っていうか化粧で血色めっちゃいいですよ?笑
子どもの患者さんも負けてない。たまたまスパイダーマンの服着てた子が、診察室でも壁づたいに動き回ったり、変なポーズ決めたりしてて、もはや本当にスパイダーマンみたいな動きしてる。付き添いの親が「やめなさい」って止めても、なりきり具合が本気すぎて誰も逆らえない空気になってる。
入院してる病棟の中でも、負けず劣らずの光景がある。患者さんがいつの間にか病衣を脱いで、前衛的な着こなしをしていたり、シーツを剥いで独自のスタイルで羽織っていたり、どこから持ってきたのか帽子をかぶっていたりする。こっちも見回りのたびに、ちょっとした展示会を見てる気分になる。誰かに指示されたわけでもないのに、みんなそれぞれ自由にスタイルを確立してるのがすごい。
こうして振り返ると、うちの病院にハロウィンらしい仮装した人は一人もいないのに、毎年誰かしらが結果的に「今日一番の仮装大賞」持っていくんだよね。本人たちに仮装してる自覚が一切ないところが、逆に一番強い。世間のハロウィンには乗り遅れてるけど、うちの病院には毎日ちょっとしたコスチュームプレイが紛れ込んでるんだと思うことにしてる。今年のハロウィンも、きっと誰かが無自覚に主役張ってるはず。表彰台があったら、誰にあげたらいいのか毎年迷いそう。
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